教育・子育て
子どもたちはみんな多様ななかで学びあう ーいま求められるインクルーシブ教育ー
- ISBN 978-4-88416-303-7
- A5判変形 カバー付並製 260ページ
- 2023年10月
定価:1,980円(本体1,800円+税)
2023年11月発売
ダウン症児のおかあさんが、競争に疲れた保護者や先生方にお送りする1冊。
本書は2022年4月にアイエス・エヌから発売された『子どもたちはみんな多様ななかで学びあう』をせせらぎ出版から再発行したもので、内容は同じです。(一部装丁、本文中のデータに変更あり)
ダウン症児のおかあさんが、競争に疲れた保護者や先生方にお送りする1冊。
本書は2022年4月にアイエス・エヌから発売された『子どもたちはみんな多様ななかで学びあう』をせせらぎ出版から再発行したもので、内容は同じです。(一部装丁、本文中のデータに変更あり)
当たり前のことですが、障害のある子もない子も、子どもたちはそれぞれ一人として同じではありません。インクルーシブ教育という言葉が「障害のあるなしに関わらず」という文脈で使われることがとても多くて、本来の「すべての子どもたちを包摂する教育」として語られることがまだ少ないことを残念に思っています。
本書に出てくる子どもたちが共にすくすくと育ち、周りの大人が子どもたちからまた学ぶ、そんな関係を皆さんに感じていただけるところがあればとても光栄です。(佐々木サミュエルズ純子)
【第一部】
障害のある子は地域の学校へ行けないの?
第1章 近くて遠い学校
第2章 “当たり前”の権利のためのたたかい
第3章 6年間の成長ーみんな一緒だからこそー
第4章 すべての子どもの幸せと未来のために
【対談】
その1 NHK Eテレ『バリバラ』コメンテーター 玉木幸則さん
多くの国では、インクルーシブ教育が当たり前
その2 東京大学大学院教育学研究科教授 小国喜弘さん
競争をあおる“人材教育”から人権保障教育へ
その3 ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会事務局長 山﨑洋介さん
いまの教育に圧倒的に足りないのは「人」と「お金」
その4 国連NGO子どもの権利条約総合研究所研究員 吉永省三さん
「子どもの最善の利益」は、子どもの話を聴くことから
本書に出てくる子どもたちが共にすくすくと育ち、周りの大人が子どもたちからまた学ぶ、そんな関係を皆さんに感じていただけるところがあればとても光栄です。(佐々木サミュエルズ純子)
【第一部】
障害のある子は地域の学校へ行けないの?
第1章 近くて遠い学校
第2章 “当たり前”の権利のためのたたかい
第3章 6年間の成長ーみんな一緒だからこそー
第4章 すべての子どもの幸せと未来のために
【対談】
その1 NHK Eテレ『バリバラ』コメンテーター 玉木幸則さん
多くの国では、インクルーシブ教育が当たり前
その2 東京大学大学院教育学研究科教授 小国喜弘さん
競争をあおる“人材教育”から人権保障教育へ
その3 ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会事務局長 山﨑洋介さん
いまの教育に圧倒的に足りないのは「人」と「お金」
その4 国連NGO子どもの権利条約総合研究所研究員 吉永省三さん
「子どもの最善の利益」は、子どもの話を聴くことから
私は、今この原稿を自宅の居間でパソコンに向かって書いています。
ふたりの子どもたち、ジェイミーとジョシュアは寝静まり、仕事で疲れた様子の夫スティーブが消えて行った寝室からは物音がしないので、バッタリ寝てしまったのかな。
今から1年半ほど前のある日、出版社の社長さんからご連絡がきました。「書籍を出版していただきたく、ご相談にあがらせていただけませんか」というメッセージを読んだときは、「え?ほんとにほんとに?まさか人違いじゃないだろうか?」と正直思いました。そんなにたいして取り柄もなく、子育てにヒーヒー言ってバタバタしている人が本を書くとどうなる?みたいなリアリティーショウのような本になるんじゃ……とあせったことを今思い出してもドキドキします。
そして、あれから二度目の春がきて、この「はじめに」を書いている自分がいるのが不思議な感じがします。私は物書きではないし、どちらかといえば作文は苦手なほうで、こんなに長くかかってしまいました。小学生だった長男ジェイミーはもうすぐ中学2年生、小学4年生だった次男ジョシュアが6年生になります。
私たちの長男ジェイミーはダウン症という先天性の特性をもって生まれてきました。生まれてきた当時は命をつなぐことが最優先でしたが、つながれた命を、私を含めた社会がどのように引き受けていくのかを、成長とともに考えるようになりました。大切な子ども、大切な人のために、よりよい世の中でありますようにと願い考えることは世界に生きる人たちに共通の気持ちではないでしょうか?
ところが、知的な成長がまわりと比べて大きく遅れているからでしょうか、小学校にあがるときに大きな壁にぶつかりました。自分たちが暮らす地域の学校から入学を拒まれているのではないかというような対応を受けたのです。私たち夫婦は、満6歳を迎えた子どもは、誰もが地域の小学校で学びはじめることを祝福されるものだと信じていました。しかし、現実にはそうではないと強く感じずにいられない数々の出来事に傷つきました。そして息子のような子どもの存在は疎んじられているのだと感じ、大変なショックを受けました。
何で普通に学校に行けないの? でも、まわりに迷惑かけたくないし……。地域の学校に通い、みんなと一緒に学びたい気持ちと、特別支援学校へ行ったほうが迷惑がかからないんじゃないかと躊躇する気持ちの間で揺れに揺れ、悩みに悩みました。だから、今同じように迷っている保護者の方がいらっしゃれば、その気持ち、とてもよくわかります。
幸いにも、私たちのまわりには、みんなと一緒に普通学級で学ぶことを当たり前に思ってくれる人たちがたくさんいて、背中を押してくれました。「幸いにも」と言ったのは、7年間、普通学級で学んで大正解だったからです。ジェイミーは中学生になった今も、字が書けません。自分の名前を言えるようになったのは小学校6年生の3学期。その他の言葉も現在獲得している最中です。それでも、まわりのいろんな友だちと一緒に学び、一緒に遊ぶことにはなんの問題もなく、スクスク、ノビノビと育ちました。そして、小学校の6年間を通して、私たち家族が出くわした問題は、障害のある子どもたちの問題にとどまらず、どんな子どもたちも巻き込む大きな問題だと気づくようになりました。
この本の第1章から第4章は、私たち家族の歩みを通じて「教育」って何だろう? という問いの答え探しの旅を続けているお話しです。(今回の出版に際して、出版社の社長さんと打ち合わせをさせていただいている最中にもどうやら私は「教育」って何なんだろうという?という言葉を何度も発していたようです)。
本文中に、「ようこそオランダへ」というエッセーがでてきます。エミリー・パール・キングスレーという作家がダウン症の子どもを授かったことについて書いたものです。ダウン症の子どもを授かるということは、そうか、こういうことだったんだと妙に納得できるエッセー。面白い視点ですので、よかったら、ここだけでも立ち読みしてください(出版社さん、書店さんゴメンナサイ!)。本文の21ページです。
でも、「教育」という字面を見るとなんだかムズカシイし、マジメで堅苦しい感じがしますよね。いやいや自分は関係ないから、と思ったほうが楽なんですが、すべての人に関係のあることです。人生の場面場面のどこかで、必ずみんなが関わること。そして、誰かに与えてもらうものでもなく、ましてや、誰かにお任せすれば何とかなるものでもありません。何度も書きますが、すべての人に関係のあることだし「自分ごと」として考えてほしいなぁって思います。
この本の後半は、旅の途中で出会った素敵な4人の方々との対談です。たくさんの知恵やご経験、それにたくさんの研究も積んでおられる有識者の方々です。皆さま全員、私にもわかるようにやさしくお話してくれています。快く対談を引き受けてくださり、このような機会を授けてくださった対談者の皆さま、そして、出版社の皆さまにこの場をお借りして改めて心より感謝を申し上げます。
後半の対談を通して、読者の皆さまにもこの旅を一緒に楽しんでいただけたら、うれしいなと思います。不謹慎と叱られるかもしれませんが、私にとってこの対談はなんとも楽しくて最高に贅沢な時間だったのです。こんなに盛りだくさんで有意義なお話は、私だけが聞くのは本当にもったいない。多くの方々に読んでシェアしていただきたいと思います。
この本は子育て本でもマニュアル本でもありません。手に取った方がそれぞれ感じるところがあれば、そして「よりよい未来・教育って何?」とちょっと立ち止まって考えていただければ光栄です。
ジェイミーのような子どもを授かったことで、そして、もちろん次男ジョシュアを授かったことでも、たくさんの人たちとめぐり合い、豊かな人生を歩ませてもらえているなぁと思います。
2022年3月1日
佐々木サミュエルズ 純子
試し読み・ご注文はコチラからどうぞ→販売サイト:コミュニティパブリッシング
ふたりの子どもたち、ジェイミーとジョシュアは寝静まり、仕事で疲れた様子の夫スティーブが消えて行った寝室からは物音がしないので、バッタリ寝てしまったのかな。
今から1年半ほど前のある日、出版社の社長さんからご連絡がきました。「書籍を出版していただきたく、ご相談にあがらせていただけませんか」というメッセージを読んだときは、「え?ほんとにほんとに?まさか人違いじゃないだろうか?」と正直思いました。そんなにたいして取り柄もなく、子育てにヒーヒー言ってバタバタしている人が本を書くとどうなる?みたいなリアリティーショウのような本になるんじゃ……とあせったことを今思い出してもドキドキします。
そして、あれから二度目の春がきて、この「はじめに」を書いている自分がいるのが不思議な感じがします。私は物書きではないし、どちらかといえば作文は苦手なほうで、こんなに長くかかってしまいました。小学生だった長男ジェイミーはもうすぐ中学2年生、小学4年生だった次男ジョシュアが6年生になります。
私たちの長男ジェイミーはダウン症という先天性の特性をもって生まれてきました。生まれてきた当時は命をつなぐことが最優先でしたが、つながれた命を、私を含めた社会がどのように引き受けていくのかを、成長とともに考えるようになりました。大切な子ども、大切な人のために、よりよい世の中でありますようにと願い考えることは世界に生きる人たちに共通の気持ちではないでしょうか?
ところが、知的な成長がまわりと比べて大きく遅れているからでしょうか、小学校にあがるときに大きな壁にぶつかりました。自分たちが暮らす地域の学校から入学を拒まれているのではないかというような対応を受けたのです。私たち夫婦は、満6歳を迎えた子どもは、誰もが地域の小学校で学びはじめることを祝福されるものだと信じていました。しかし、現実にはそうではないと強く感じずにいられない数々の出来事に傷つきました。そして息子のような子どもの存在は疎んじられているのだと感じ、大変なショックを受けました。
何で普通に学校に行けないの? でも、まわりに迷惑かけたくないし……。地域の学校に通い、みんなと一緒に学びたい気持ちと、特別支援学校へ行ったほうが迷惑がかからないんじゃないかと躊躇する気持ちの間で揺れに揺れ、悩みに悩みました。だから、今同じように迷っている保護者の方がいらっしゃれば、その気持ち、とてもよくわかります。
幸いにも、私たちのまわりには、みんなと一緒に普通学級で学ぶことを当たり前に思ってくれる人たちがたくさんいて、背中を押してくれました。「幸いにも」と言ったのは、7年間、普通学級で学んで大正解だったからです。ジェイミーは中学生になった今も、字が書けません。自分の名前を言えるようになったのは小学校6年生の3学期。その他の言葉も現在獲得している最中です。それでも、まわりのいろんな友だちと一緒に学び、一緒に遊ぶことにはなんの問題もなく、スクスク、ノビノビと育ちました。そして、小学校の6年間を通して、私たち家族が出くわした問題は、障害のある子どもたちの問題にとどまらず、どんな子どもたちも巻き込む大きな問題だと気づくようになりました。
この本の第1章から第4章は、私たち家族の歩みを通じて「教育」って何だろう? という問いの答え探しの旅を続けているお話しです。(今回の出版に際して、出版社の社長さんと打ち合わせをさせていただいている最中にもどうやら私は「教育」って何なんだろうという?という言葉を何度も発していたようです)。
本文中に、「ようこそオランダへ」というエッセーがでてきます。エミリー・パール・キングスレーという作家がダウン症の子どもを授かったことについて書いたものです。ダウン症の子どもを授かるということは、そうか、こういうことだったんだと妙に納得できるエッセー。面白い視点ですので、よかったら、ここだけでも立ち読みしてください(出版社さん、書店さんゴメンナサイ!)。本文の21ページです。
でも、「教育」という字面を見るとなんだかムズカシイし、マジメで堅苦しい感じがしますよね。いやいや自分は関係ないから、と思ったほうが楽なんですが、すべての人に関係のあることです。人生の場面場面のどこかで、必ずみんなが関わること。そして、誰かに与えてもらうものでもなく、ましてや、誰かにお任せすれば何とかなるものでもありません。何度も書きますが、すべての人に関係のあることだし「自分ごと」として考えてほしいなぁって思います。
この本の後半は、旅の途中で出会った素敵な4人の方々との対談です。たくさんの知恵やご経験、それにたくさんの研究も積んでおられる有識者の方々です。皆さま全員、私にもわかるようにやさしくお話してくれています。快く対談を引き受けてくださり、このような機会を授けてくださった対談者の皆さま、そして、出版社の皆さまにこの場をお借りして改めて心より感謝を申し上げます。
後半の対談を通して、読者の皆さまにもこの旅を一緒に楽しんでいただけたら、うれしいなと思います。不謹慎と叱られるかもしれませんが、私にとってこの対談はなんとも楽しくて最高に贅沢な時間だったのです。こんなに盛りだくさんで有意義なお話は、私だけが聞くのは本当にもったいない。多くの方々に読んでシェアしていただきたいと思います。
この本は子育て本でもマニュアル本でもありません。手に取った方がそれぞれ感じるところがあれば、そして「よりよい未来・教育って何?」とちょっと立ち止まって考えていただければ光栄です。
ジェイミーのような子どもを授かったことで、そして、もちろん次男ジョシュアを授かったことでも、たくさんの人たちとめぐり合い、豊かな人生を歩ませてもらえているなぁと思います。
2022年3月1日
佐々木サミュエルズ 純子
試し読み・ご注文はコチラからどうぞ→販売サイト:コミュニティパブリッシング
佐々木サミュエルズ 純子(ササキサミュエルズ ジュンコ)
長野県生まれ。2022年現在大阪在住。2人の男児の母。夫はニュージーランド人でもあり英国人でもある(が、本人はニュージーランド人だと思っている)。1990年代にイギリスの大学に入学し卒業後は現地で就職。その後、永住権を取得し現地に骨をうずめるつもりで生活していたが、縁あって結婚した夫のたっての希望で日本に移住。移住して間もなく長男を妊娠・出産。わくわく育ちあいの会代表(旧・インクルーシブ教育をすすめる会)。子育てと仕事に奮闘する毎日で趣味がないのが悩み。会の定例会や地域の保護者のボランティア活動などで人に会って癒されている。
長野県生まれ。2022年現在大阪在住。2人の男児の母。夫はニュージーランド人でもあり英国人でもある(が、本人はニュージーランド人だと思っている)。1990年代にイギリスの大学に入学し卒業後は現地で就職。その後、永住権を取得し現地に骨をうずめるつもりで生活していたが、縁あって結婚した夫のたっての希望で日本に移住。移住して間もなく長男を妊娠・出産。わくわく育ちあいの会代表(旧・インクルーシブ教育をすすめる会)。子育てと仕事に奮闘する毎日で趣味がないのが悩み。会の定例会や地域の保護者のボランティア活動などで人に会って癒されている。